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調味料「さしすせそ」の正しい順番とは?

母や祖母から料理を教えてもらう際、「調味料は、さしすせその順番だよ。」と言われたことはないでしょうか。さしすせそとは、日本料理における基本調味料5種類の別の言い方です。その5種類とは、下記の通りです。

さしすせその調味料を順番通りに使用すると、昔から料理がおいしく作れるといわれています。今回は、さしすせその調味料の役割や順番、使い方についてお伝えします。

さしすせその調味料の特徴や役割

料理人として調味料の「さしすせそ」を使いこなすには、その特徴や役割について理解しておく必要があります。ここでは、各種調味料のもつ特徴や役割についてご説明します。

さ(砂糖)

砂糖は、甘味のある調味料として、焼き物や煮物などで使用される調味料です。甘味をつけるだけでなく、親水性が高いため、でん粉の老化や食品の乾燥を防ぐ役割があります。なお、砂糖は加熱をすればツヤやきれいなきつね色を与える働きをもっています。てんさい糖や黒砂糖、ざらめ糖、車糖(『くるまとう』と読みます)など、さまざまな種類があるため、用途によって使い分ける技術が求められます。

し(塩)

塩は、味の方向性を左右する代表的な調味料です。食べ物に対して塩味をつける効果はもちろん、他の調味料とのバランスを調整し、短所を補いながら旨味をつくることができます。たとえば、汁粉に塩を少量加えれば甘さが引き立ち、酢に加えれば酸味を和らげます。他にも、塩は長期保存における「微生物の繁殖を防ぐ」という役割もあります。

なお、生活用塩には、主に海水を原料として製造する国産の塩と、輸入して加工する塩が存在します。国産の塩は、海水から濃度の高い海水を製造し、煮詰めることで食用として販売されています。一方で、輸入して製造する塩は、オーストラリアやメキシコから輸入し、食用にするために1度水に溶かして洗い、精製して不純物を取り除きます。後に、加工したものは再加工塩、加工していないものは原塩と呼ばれます。なお、食用には、再加工塩を使用します。

す(酢)

酢は、酢酸を主成分としており、果実や穀物などを発酵・熟成させることで、酸味をもった調味料となります。料理に風味や変化を与え、人々の食欲を増進させるだけでなく、臭みの抑制や防腐、殺菌効果などの役割が期待できます。

酢は、主に醸造酢と合成酢に分類できます。醸造酢に入っている米酢は、昔から製造されており、主に日本料理で使用されます。一方で、米やトウモロコシ、小麦など、さまざまな穀物を原料としている穀物酢は、どのような料理にも合うため消費量が非常に多いです。

せ(醤油)

醤油は、日本で成長を遂げた代表的な和風調味料です。歴史をさかのぼれば、中国の醤(ひしお)が起源とされています。醤は、人々が食べ物へ塩をかけて保存する過程の中で、発酵や熟成をすれば旨味をもつことを知り、それがきっかけとなって広がったといわれています。

現在は、大豆や脱脂大豆と小麦粉を原料としており、麹菌(こうじきん)を加えて発酵・熟成させることで醤油を作り上げています。醤油は、味や色づけ、香りづけなど、さまざまな効果をもった優れた調味料です。

そ(味噌)

味噌は、大豆から作られる代表的な発酵食品で、昔から原料や気候風土、慣習に応じて、地方独自の味噌が製造されてきました。もともと、中国から伝わり、日本では未醤(みそ)と呼ぶ調味料があったため、これが今日の味噌誕生の大きなきっかけとなっています。

味噌は、米や大豆、麦から作られており、深みや豊かさのある風味は、味噌漬や汁物、煮物など、多くの料理人から幅広く使われています。味噌の色は、淡色や赤、白に分類され、味は甘、甘口、辛口にわけられます。しかし、なぜこれほどまでに味噌の色は異なるのでしょうか。その秘密は、味噌の処理方法と熟成期間に隠されています。大豆を蒸して、長期熟成させれば赤褐色になり、茹でて短期熟成させれば、白くなります。他にも、味噌の味の違いは、加える塩と麹の糖分の量で決まります。

さしすせその調味料の使い方

それぞれの調味料には、使用のタイミングがあり、料理人は具体的な使い方を正しく理解する必要があります。すべてのお客さまに対して、味や風味が統一された料理を提供するためにも、さしすせその調味料の使い方を確認していきます。

砂糖の使用法

砂糖をたくさん使用する蜜煮などの場合は、食材の浸透圧と調味液の差で食材が硬くなることがあります。そのため、砂糖を1度にすべて入れてはいけません。定められた分量を、何回かに分けて加えていきます。そして、他の調味料を使用したあとでは、食材に味がしみ辛くなってしまいます。砂糖を他の調味料よりも先に使うのは、こうした理由があります。

塩の使用法

塩は、塩加減や入れるタイミングによって、大きな違いが出る調味料であるため、料理に使用する際は細心の注意を払う必要があります。食材の旨味を引き出すための微妙な塩加減を調整する下ごしらえの技法は、料理人を目指すものにとって欠かせないスキルとなります。

■振り塩:食材に直接塩を振ることで、臭みを消し、水分を出すことで身をしめる方法を振り塩といいます。振り塩に使用する塩の量は、材料の大きさや種類、質によって大きく異なります。塩ムラをださないように、少し高い位置から塩を振り入れると、全体的にバランスよく塩味が入ります。

■立て塩:1~4%の海水程度の濃度の海水を立て塩といいます。キュウリなどの野菜を漬けてしんなりさせたり、魚を洗って身をしめたりする技法として使われます。

■紙塩:白身の魚や貝類を和紙で覆い、塩を振り水で湿らせてかすかに塩味をつけることを紙塩といいます。紙塩は、主にお造りのような「食材の持ち味を生かしたい時」に利用されます。

ただ塩を振りかけるという動作でも、料理人によって差が出やすいため、幾度となく練習を重ねる必要があります。

酢の使用法

酢を使用する際の最大のポイントは、酢本来のきつさを感じさせないことです。口に入れた瞬間、「酸っぱい!」とお客さまに思われてしまったら、食材の良さを100%実感していただくことはできません。

酢のきつさを隠すために、味噌や砂糖、香辛料を加えることもあります。酢の量を控えて柑橘類の汁を加えたりすることで、自然な酸味を表現できます。酢は、そのまま使用しても良いのですが、1度軽く煮たててあげると、酸味が抑えられ一気に風味の異なるものへと変化します。

醤油の使用法

醤油は、必要以上に加熱をしないことが大切です。なぜなら、加熱をしてしまうと大豆や麦から生み出される豊かで深みのある風味が失われてしまうからです。しかし、煮物を作るため、醤油を長時間加熱しなければいけないということもあるでしょう。

その場合は、醤油の使用のタイミングを何回かにわけます。汁物などはできあがりのタイミングで加えると、豊かな醤油の風味を失いません。ただし、醤油を焼きつけたり、食材へ味を浸透させたりすることで、豊かな風味を表現するケースもあるため、既存のルールにとらわれることなく、醤油の味を引き出していくことが大切です。

味噌の使用法

味噌といえば、みそ汁で使用する大切な調味料です。味噌を使用する際、お湯の中に入れて加熱していませんか?味噌を加熱してしまうと、大豆や小麦の風味が損なわれるため、火を入れすぎないように注意する必要があります。そのため、みそ汁は本来、火を消してから仕上げに入れます。

味噌は、こがしてしまうと苦みを発し、香りが飛んでしまうので、どのようなタイミングで使用すれば、豊かな風味を損なわないか考えながら使用します。そして、味噌には、米味噌や豆味噌などの異なる性質の調味料があるため、自分の好みのものを混ぜ合わせながら料理に使用すれば、独自の風味を自分で作りだすこともできます。

味噌は、料理人の工夫次第で、何百、何千という味の豊かさや深みを自由自在に表現できる調味料として重宝されています。

さしすせその調味料を順番に入れる意味とは?

さしすせその調味料が、和食にとって欠かせないものであるならば、どのような順番で使用しても味に変わりはないのではないかと考える方もいるでしょう。しかし、砂糖、塩、酢、醤油、味噌という適切な順番を守らず、適当に調味料を使用しても、食材の味をうまく引きだすことはできません。

なぜ、調味料を決められた順番で入れる必要があるのでしょうか。その意味を探っていきます。

砂糖

さしすせその調味料の中でも、砂糖は最初に使う調味料です。砂糖を最初に入れるのは、砂糖の分子が大きく、材料に浸透するのに時間がかかってしまうからです。なお、砂糖の分子は、塩の6倍の大きさがあります。そのため、大きな分子の砂糖を食材へ早く浸透させるには、最初のタイミングで使用する必要があります。食材には、小さな隙間があり、その空間を大きな砂糖で埋めていくイメージです。そして、砂糖には、食材を柔らかくする働きがあるため、素材の食感を良くします。

塩には、素材の水分を外へ引きだし、引きしめる効果があります。そのため、塩を入れるタイミングは、砂糖を入れて素材が十分に柔らかくなってからが良いとされています。塩によって、身が引きしまってしまったら、食材に砂糖の甘味が入っていきません。

なお、甘味が入っていかないのは、先ほども説明した分子の大きさによる違いが関係しています。分子が小さい塩は、素材の隙間に入りやすく、味がしみやすいです。

そして、塩は、浸透圧の関係で砂糖よりも水分移動が早く生じます。野菜に塩をかけておくと、食材が水分だらけになったという経験をしたことがあるでしょう。細胞内の溶液が塩によって出てしまうと、甘味が入っていかないため砂糖を使用したあとに塩を加えます。

酢・醤油・味噌

酢や醤油、味噌は、料理に風味や香りを与えるための調味料として使用します。そのため、砂糖や塩などの調味料を使い終わってから、最後に入れます。料理によって、作り方や仕上げのタイミングが異なるため、少しずつ加えて完成のタイミングで味の豊かさや深みが損なわれた状態にならないように、入れる量を調整していきます。

そして、これらの調味料は、非常に熱に弱いです。料理にもよりますが、長時間加熱することはご法度とされているため、「調味料は火を切ってから使用する」という習慣をもつことが大切です。風味調味料を上手く使いこなせるようになれば、味や風味の表現力の幅が大きく広がっていきます。

他にも、製造元によっては同じ種類の調味料でも独特の特徴があります。それぞれの調味料の特徴や個性を理解しながら、混ぜ合わせるなどの工夫をして最適なタイミングを独自で見つけていくと良いでしょう。

さしすせその調味料を使いこなせる料理人になろう!

和食において塩や砂糖は、味の要です。どれくらいの量を使用するのかで、料理の味が大きく左右されます。特に、塩は、種類が多く、販売物によって塩味や甘味、深みが異なるため、指先で調整しながら、上手く振りかける必要があります。

どれだけ高価な食材を購入し、料理で使用しても肝心の調味料の扱いを間違えていれば、素材の良さをお客さまに知っていただくことはできません。調味料は、砂糖や塩、酢、醤油、味噌以外にも、みりんやお酒、山椒、トウガラシなど多種多様です。

たとえば、山椒は、木から収穫されるもので、芽を木の芽、花を花山椒、実を実山椒と呼びます。
料理人は、それらの生息地や土地による風味の違いを自ら学び、積極的に料理を作り、時にはレシピを創作します。

京都調理師専門学校では、料理人を目指す学生に対して、さしすせその基本的な調味料の特徴や使用のタイミング、具体的な分量に至るまで、すべて徹底的に指導しています。プロの料理人が長年の経験から得た知識や技術を余すことなく継承していくため、京都調理師専門学校を卒業すれば、立派な料理人として人生のスタートをきることができます。

学校の斡旋を有効に利用すれば、和食を提供する日本料理店への就職も可能です。そして京都調理師専門学校では、優れた実務経験を積むための有名料亭へのインターンも実施しており、実務を通じて調理技術を高めることができれば、インターン先で採用される可能性も十分にあります。もし、料理人になりたいという強い想いがあるのなら、その願いを京都調理師専門学校で叶えてみませんか。

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