お正月の食べ物といえば、「餅」を想像する方もいるかもしれません。子どもの頃は、年末からお正月にかけ、祖父母の家でお餅つきをして楽しんだという方もいるでしょう。お餅は、もともとお正月や祝い事の食べ物で、端午の節句や桃の節句でも、お供え物として使われてきました。
つまり餅は、日本人の生活や文化にとって欠かせない食べ物となっており、最近では、ハレの日に関係なく、スーパーなどで日常的にお餅が売られるようになりましたが、やはりお正月の準備として購入する方も多いでしょう。
しかし、お正月にと購入したお餅は、お正月が終わっても、余っていることってありませんか?
個包装されている未開封のものは別ですが、餅は、想像以上にカビが生えやすく、あまり長持ちしません。いつも余ったお餅の処分に困っているという方も多いでしょう。今回は、お餅の保存方法やおすすめのレシピをご紹介します。
目次
お餅は、日本古来から伝わる伝統的な食べ物です。もち米を蒸し、臼(うす)の中で杵を使って粘り気がでるまで叩く(餅をつく)ことで出来あがります。独特の粘り気と伸びのあるお餅は、昔から貴重な食べ物として扱われてきました。ここでは、お餅のレシピについて知る前に、その歴史や具体的な保存方法をご説明します。
お餅は、いつから食べられるようになったのでしょうか。歴史を遡ると、縄文時代後期の稲作の伝来とともに東南アジアから継承されてきたといわれています。当時のもち米は、お餅になりやすい性質をもっており、行事のお供え物として食べられるようなったのは、平安時代からだそうです。
そして、室町時代になると茶道菓子としても使われるようになりました。その結果、節句やお正月などの季節の節目に食べるという習慣が広まり、縁起の良い食べ物として伝えられています。
稲作が日本に伝わった頃の米は、今よりも赤い色をしていたといわれており、「白い餅」は神妙な食べ物だとされてきました。当時、白いお餅は、縁起の良い白鳥を連想したことから、霊を宿すものと考えられてきました。ここには、粗末に扱われることがないようにという意味があるといわれています。白いお餅は、稲の神様である稲霊(いなだま)を象徴しており、単なる白い食べ物ではなく「神が宿る貴重な存在」として言い伝えられてきました。いつしか、お餅を食べると生命を再生させるほどの力があるといわれるようになり、お祝いや祭事などのハレの日に食べる慣習が、広まっていったと考えられています。
お正月にお供えする鏡餅の形は、非常に平たく満月のような丸い形をしていますよね。では、なぜ鏡餅は、丸く平たい餅を重ねて飾るようになったのでしょうか。
一説によれば、人間の魂がこもる心臓を模しているといわれています。他にも、社会や人間関係が円満であることを意味するともいわれています。そのような願いや長寿であることを祈願して、そして、徳と福が重りますようにと願い、お正月にやってくる年神様が宿られるお餅を、2枚重ねにしました。
他にも、満月は、別名望月(もちづき)と呼ばれ、鏡餅にお願いをすると夢が叶う、と昔の人は信じていたようです。丸く大きなお餅は、天皇陛下の三種の神器のひとつである「銅鏡」に形が似ていることから、鏡餅と呼ばれるようになりました。そのため、お餅の中では、1番偉い餅、なのだそうです。
1月11日は、鏡餅を下げて皆で食べる「鏡開き」の日です。昔の鏡開きは1月20日でしたが、江戸時代になり、1月11日頃となりました。「頃」というのは、地方によって若干の違いがあるためです。
鏡開きでは、お正月にお供えしていたお餅を下げて、家族でいただきます。鏡餅として使っていたお餅には、神様の霊力が宿っていると考えられていたため、それを皆で分かち合うこという考え方から、家族みんなで食べましょう、という習慣になったようです。
ただし、武家の家族では、鏡餅を用具と呼ばれる戦の装備具を収めた箱の上に置いていたため、それを包丁で切るのは縁起が悪いといわれていました。また、包丁を使ってお餅を切ると、人間関係や神様との「縁を切る」と考えられたため、木槌で割ることで「福を分かち合う」とされたようです。
割ったお餅は、ぜんざいに入れたり、きな粉をつけて食べたりします。大根おろしや納豆などを付けて食べることもできますし、単に焼いたお餅もおいしいですよね。
お餅は、そのまま放置すると、すぐにカビが生えてしまいます。鏡餅の表面に、黒や赤、黄色い斑点状のものがついている場合は、カビが生えている状態です。では、どうすればカビを生やさないように保存できるのでしょうか。
お餅を保存する場合は、下記の方法が有効です。
練りワサビや練りカラシは、細菌の繁殖を抑える効果があるため、お餅のカビ予防にも有効です。例えば、お湯に少量の練りワサビや練りカラシを溶かし、お餅の保存容器に入れておきます。これだけで、カビの繁殖スピードは遅くなるといわれています。
アルコールには、除菌効果があります。そのため、カビが生えやすいお餅の表面に焼酎を塗ると、カビを抑えられます。極力、アルコール度数が高いものを塗ると、カビ防止の作用が高まります。
余ったお餅は、袋やタッパーに入れて冷凍保存すると、カビが生えません。さまざまな方法の中でも、もっとも保存効果が高いです。
カビには酸素が必要であるため、発生しないように水の中に入れて保存します。水が腐ってしまっては意味がなくなってしまうため、毎日取り換えます。このとき、お水からお餅が出てしまうとカビが生えてしまうため、全部浸し冷暗所で保存することが大切です。
空気中において、お餅が多くの水分を含んでいると、カビが生えやすくなりますので、鏡餅のお餅を薄くカットして天日干しにし、水分がなくなるまで乾燥させます。太陽の光によって乾燥したお餅は、紙袋に入れるか、ビンに入れて湿気のない場所で保存することが長持ちせるコツです。
しっかりと保存したつもりでも、お餅にカビが生えてしまうことがあります。お餅に生えたカビは、食べても特に問題がないと言う方がいますが、やはりカビはカビです。カビの中には、食べることで身体に悪影響を及ぼすものもあります。
カビは、表面に見えている部分だけ取り除けば良いわけではなく、中に根も張るため、分かる範囲で取り除いたとして、それで大丈夫なのかを見た目で判断するのは困難です。
とても残念なことですが、カビが生えていたら処分した方が良いでしょう。
お餅は、カビが生えやすいことを理解し、そのような状態になってしまう前に食べてしまいましょう。
さて、お正月で余ったお餅を有効利用した、だれでも簡単に作れる揚げ餅の作り方をご紹介します。どこにでもある材料でおいしく作れるため、時間があるときに作ってみると良いと思います。
揚げ餅で使用する材料は、お正月の間飾っていた鏡餅と、サラダ油だけです。ただし、どんなお餅でも揚げ餅になるわけではありません。おいしい揚げ餅を作るには、「乾燥したお餅」を使用することがポイントです。
木槌で割る際、少し弾力を感じるようであれば、太陽の光に数日間あててしっかりと乾燥させておきます。お餅に手で触れた際、乾燥や硬さを感じるようになれば、おいしい揚げ餅になるサインです。
揚げ餅の材料の準備ができたら、手順に沿って作っていきましょう。具体的な作り方は、下記の通りです。
味や香りは、非常に香ばしくて、いくらでも食べられます。3時のおやつに最適なので、余ったお餅のレシピとして、ぜひ試してみてください。少し、物足りないなと感じた場合は、軽く塩を振りかけるとおいしく食べられます。
揚げ餅が大好きな方に、おすすめのレシピがあります。揚げ餅は、軽いおやつとしては、最適ですが、ご飯にはなりづらいでしょう。しかし、揚げきなこもちであれば、自宅での昼ごはんとしてお腹を満たすことができます。それでは、見た目も珍しい揚げきなこもちの作り方を確認していきます。
揚げきなこもちで使用するものは、お餅と油、きなこだけです。使用するお餅は、大きな鏡餅ではなく子供が丸めて作るような小型のお餅です。
もし、お餅を冷凍して保存しているのであれば、お水に浸して、電子レンジで500W、2分間加温します。お餅が軟かくなったら、水気を拭き取ります。揚げるときに、パチパチとした油はねがなくなります。
揚げきなこもちの材料の準備ができたら、レシピ通りに作っていきます。具体的な作り方は、下記の通りです。
もし、きな粉がなければ、しょうゆと海苔の組み合わせでも、おいしいお餅が食べられます。余ったお餅で簡単に作れて、腹持ちも良いので、ぜひレシピを参考にしていただけたらと思います。
いつも鏡餅にカビを生えさせてしまって、捨てることになってしまっていた方はぜひ今年から、カビが生えてしまう前に、揚げ餅の料理を作って家族とおいしく食べてみてはどうでしょうか。揚げ餅に使用するお餅は、必ずしも白餅でなければいけないというわけではありません。黒豆を入れた豆餅でもおいしい揚げ餅ができます。揚げることで、黒豆から香ばしい香りが漂い、きっと幸せな気持ちになれるでしょう。
さて、お餅の歴史や文化について勉強すると、昔からお祝いごとや祭事などのハレの日に使われていたことが分かるので、どのような食材も無駄にしてはいけないと感じる人もいるのではと思います。
お餅は、保存方法に注意を払っていれば、年中おいしい状態を維持できます。これは、お餅に限った話ではありません。食材のすべてに言えることです。
そして京都調理師専門学校では、さまざまな食材をもちいて、高度な調理技術はもちろん、どうすれば健康的な食事をお客さまに提供できるのか、栄養学や衛生面に至るまで、講師の先生方にしっかりと指導していただけます。
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