調理師として自分のレベルを上げていくには、料理界の成り立ちや順守すべき法律について正しく理解しておく必要があります。調理師は、国家資格ですので、許可なく名乗ることはできません。
あなたは、将来、調理師になるために、どのような知識や技術を高めていますか?まず基本的に、調理師は料理界の専門家として常に正しく包丁を扱うことが求められます。今回は、調理師としてレベルを上げていくために、仕事の成り立ちや正しい包丁の使い方、献立の作り方についてお伝えします。
目次
調理師とは、社会生活においてどのような位置づけがなされ、消費者からは、どのような役割を期待されているのでしょうか。ここでは、調理師としてのレベルを上げるために必要な基礎知識についてご説明します。
日本料理である和食が独特の発展を遂げるとともに、調理師は「職業人」であるという評価を受けるようになりました。1958年に調理師法が制定されると、調理師は日本社会において調理の専門職であるという認識が一般にも広がっていきました。
調理師法が創設される以前は、会社の工場や病院の給食施設で働く人は、すべて板前や調理人などと呼ばれていました。のちに、各都道府県で調理師に関する条例が制定されることで、少しずつ調理師は職業人としての地位を高めていったのです。
しかし、ある県で取得した資格が他県では通用しないなどのトラブルが発生し、全国で通用する免許制度の創設を求める声を受けて、現在の調理師法が制定され、調理師は全国共通の「国家資格」となりました。この法律により調理師として身分が確立されていったのです。
調理師法の目的は、調理師として必要な栄養学や調理方法、衛生方法に関して基本的な知識や技能を備えるためです。免許制度を整備することで、飲食物を提供する施設や営業において調理技能の合理的な発達を促進し、国民全体の食生活の向上を目的としています。
そして、調理師とは、調理師の名称を用いて調理業務に従事できるものとして、都道府県知事から免許を交付された者をいいます。そのため、15年にもおよぶ長年のキャリアを料理界で積んだとしても、調理師と名乗ることはできませんし、調理師と思わせるような紛らわしい名称を使用する行為も禁止されています。
調理師としてのレベルを上げていくのなら、調理師免許の取得から始める必要があります。調理師免許を取得するには、都道府県知事の指定する調理師養成施設で、1年以上の調理、栄養および衛生に関して調理師として必要な知識や技能を取得する必要があります。
調理師養成施設の修業年数は、1年以上と定められており、昼間部が1年、2年、3年、夜間部が1年半または2年となっています。卒業までに履修するべき内容が定められており、食生活や健康、食品と栄養の特性、調理理論と食文化概論、調理実習などの教育を960時間以上受けることになります。
調理師にとって、食材を「切る」という技能は、非常に重要なスキルです。食材を正しく切れば、調理しやすくなり、口に入れても食べやすくなります。調理師としてレベルを上げるには、食材の切り方や見た目の美しさにこだわる必要があります。中でも「切る」技能を確認しやすいのが、野菜の切り方です。切った野菜の大きさや切り口が不揃いでは、お客さまには提供できないからです。ここでは、調理師が習得すべき野菜の切り方をご説明します。
輪切りとは、円筒系、または球状の野菜を円になるように切る技法のことです。煮物や揚げ物を作る際、よく使われます。
半月切りとは、円筒系のものを半分に切り、それをさらに小口から切る技法のことです。椀の添え物や煮物などで使われており、切り方としては輪切りの一種とされています。
銀杏切りは、半月切りにしたものをさらに半分に切り、それを小口から切っていく技法のことです。こちらも半月切りと同様に椀の添え物や煮物などで使われています。
斜め切りとは、円筒系のものを小口から斜めに切っていく技法のことです。煮物や酢の物、鍋物、料理の飾りなどで使われています。
拍子切りとは、材料をマッチ棒のように細長い棒状に切る技法のことです。野菜の厚さを7~8mm、長さを5~6cmに統一することで、美しく野菜をカットできます。主に、煮物や揚げ物、酢の物で使われます。
千六本切りは、一般的に繊六本(せんろっぽん)や千六本と書くことがありますが、もともとは繊蘿蔔(せんろふ)のことです。この後で出てくる「せん切り」とは別の切り方です。
頭文字の繊とは、中国語で細かく切ったという意味があり、一方の蘿蔔は、大根を表しています。
細かく切った大根のことをせんろほんと読んでいましたが、繊維に沿って細かく切る、あるいは線状に切るなどの意味合いが加わって、繊六本から千六本へと漢字が転じていきました。千六本切りでは、野菜をやや太い千切りのように切っていきます。
賽の目切りとは、材料をさいころのように切る技法のことです。大きさは、盛り付け方や作る料理によって変わります。基本的に、小さいものは椀の添え物に、大きなものは煮物に使用します。
あられ切りとは、小さい賽の目切りのことです。他の材料の詰め物や和え物の衣を作る際に、よく使われる技法です。基本的な切り方は賽の目切りと変わりありませんが、切る幅を狭くして小さく切り分けるようにします。大きさの目安ですが、1辺が2~3mm程度にすると美しく野菜を切ることができます。
みじん切りとは、せん切りにした材料を小口から細かく刻む、もしくは三つ葉のような茎の細いものをそのまま刻む技法のことです。和え物の椀種や衣、蒸し物の混ぜ物、薬味を細かく刻むときに、よく利用されます。
桂むきとは、ニンジンや大根、ウドなどの野菜を左手で回しながら、巻物を読み解いていくように1mmくらいの厚さで薄くむいていく技法のことです。大根やニンジンなどの野菜を持っている左手と包丁を持っている右手をバランス良く動かすことで、美しく切ることができます。
包丁の動かし方や持ち方、力の入れ方など、ひとつでもバランスが崩れてしまうと、薄く均等にむくことができない、非常に難しい技術です。日本料理店で働くことが目標であるならば、ぜひともマスターしておきたい包丁技法です。
せん切りとは、材料を薄切りしたもの、またはむいたものを細く切る技法のことです。どのような太さにするのかについては、作る料理によって変わります。太めのサイズにするときは、材料を薄切りにしていきます。造りの添え物にするときには、へぎ切り(包丁を寝かせて手前にすべらせながら材料を薄くカットしていく技法のこと)や桂むきにしたものを使います。
色紙切りとは、材料を色紙のように薄く切る技法のことです。厚さは、1~2mm程度に、統一していきます。料理としては、煮物や椀の添え物などによく使われます。
短冊切りとは、材料を七夕の短冊の形状に薄く切る技法のことです。厚さは、1~2mm程度に、笹の葉に飾る短冊のようにカットします。主に、椀の添え物や酢の物に使います。
乱切りとは、ニンジンやゴボウなどの野菜を不規則に切る切り方のことです。材料を回しながら大きさを揃えて切るため、回し切りと呼ぶこともあります。煮物を作るときに、よく利用されていますが、その理由はカットした面がとても広くなり、味がしみやすくなるからです。
また、乱切りという名称ですが、形状や大きさが同一になるようにカットするため、火の通りは均一になります。煮物以外にも、きゅうりのお漬物を作るときに、乱切りにすると野菜の食感を楽しむことができます。
笹搔きとは、ゴボウに用いる技法のことです。右手で包丁を握り、鉛筆を削るように笹の葉状に細長く切っていきます。左手は、ゴボウを回転させます。和え物やきんぴらゴボウを作るときに、便利な包丁技法です。
今後、調理師として自分のお店をオープンすることが目標なら、良い献立の条件を覚えて、ひとつずつレベルを上げていく必要があります。仕事によっては、毎日献立作りに追われることになりますが、良い献立の条件と正しい書き方さえ覚えてしまえば、非常に簡単に献立表を作ることができます。ここでは、良い献立の条件や書き方についてご説明します。
栄養価を考えた献立を作るには、日本の風習や季節を考慮したうえで旬の食材をバランスよく取り入れ、栄養面にも配慮して作る必要があります。日本料理における良い献立の条件を挙げてみました。
もし、上記の条件とズレがあるのなら、献立を見直す方が良いでしょう。他にも、急な人数変更(注文数の変更)にも対応できることや、お客様の予算とあっているといった配慮も大切です。
日本料理の献立は、書式にのっとって作ります。書式とは、献立作りのルールのことです。書式があれば、献立作りを総合的にとらえることができます。そのため、調理法に偏りがなくなり、食材が重複してしまうなどのミスを減らすことができます。また、食材の配色やバランスなど、料理の盛り付けまでをイメージできます。
献立には、正しい書き方があります。例えば、下記のようなルールが存在します。
献立表を作りたいという想いがあるものの、キレイな字が書けないため不安に感じている方もいるでしょう。現代は、パソコンを使って好きな書体で簡単に献立を作成することができます。
1度作成した献立表は、写真とともにデジタル化して保存できるため、次世代へ継承することもできます。また、献立を正しく作ることで、調理場の従業員が料理の全体像を把握しやすくなるため、作業計画表として大きな役割を担っています。
日本料理では、食事の際に箸を使うほか、食器を手で持つことが許されています。そのため、正しい食事の所作について知らなければ、動作の一つひとつが見苦しく、相手に不快な思いさせることにもなりかねません。
例えば、箸の取り上げ方の正しい作法は、「三手(みて)で取る」といいます。三手で取るとは、下記の手順に従っておこなうことです。
このような所作のルールを知っておくだけで、お箸をスムーズに持つことができます。調理師として料理界で働くことになると、数多くの料理店を食べ歩くことになるでしょう。
料理人として、恥ずかしい思いをしないようにするためには、食事作法に対して常に勉強する努力も必要です。料理人として、基本的な食事の所作を知らなければ、お客さまにおもてなしの料理を作ることはできません。
なお、京都調理師専門学校では、日本料理理論という授業で料理の歴史や食材の特徴、だしの引き出し方、具体的な調理法などを講師の先生が丁寧に指導しています。1日ずつカリキュラムを進めながら、調理について、より体系的に勉強することができます。
将来調理師として活躍できるよう、学ぶ心を忘れずに頑張ってくださいね。