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食に関する仕事の実際を見てみよう

食に関する仕事は非常に幅が広く、活躍の場所も多種多様です。調理業務に従事する人もいれは、幼児や高齢者に栄養バランスや調理方法を指導する立場の人もいます。今回は、食に関する仕事を行う場合、どんなことをするのか、どういった場所で働くのかについてご紹介します。

食に関する仕事、その内容は?

食に関する仕事と一言に言っても、その業務内容は、いろいろあります。そのため、分野によって仕事の内容がまったく異なります。実際に、調理師免許などの資格を取得した人は、どのような仕事に従事することになるのか、具体的にご紹介します。

給食の調理

保育園児や小学生、中学生が楽しみにしている給食は、給食センターなどに勤める、給食調理員が作っています。給食調理員は、児童の保護者などから給食費を徴収し、その費用から栄養バランスが考えられた給食を作ります。

近年、給食の調理に従事するには、調理師免許が必要であることが多く、栄養バランスのとれたものをたくさん作ることにとどまらず、アレルギーや持病などを考慮して、特別な食事作りを行います。

給食には献立があり、毎日扱う食材や、出来上がる給食の内容は、大きく異なります。そのため、注文を誤ってしまうと、栄養バランスのとれた食事を作ることができません。また、食中毒などの衛生面に配慮しながら、安全で美味しいものを作ることが主な仕事内容です。

食や料飲に関するサービス

食に関する仕事は、給食の調理以外にも食や料飲に関するサービスがあります。たとえば、ホテルの料飲部門では、オープン時、お客さまが訪問する前に、料理やドリンクを素早く提供できるように準備します。

そして、お客さまが食事を終えたら、見送る準備を始めます。ホテルなどに訪問するお客さまは、食事以外にも、会話を楽しみに訪問する方もいます。食材には、どういったものを使用しているのか、ワインの年数や料理を作ったシェフの経歴、メニューの詳細、毎日のニュースなど、さまざまな会話をしながらもてなす必要があります。

ちなみに、一定のクオリティが保たれたホテルや旅館などでは、テーブルエリアを担当するスタッフがお客さまの好みを普段の会話を通してヒアリングし、次のメニューへと反映させていくこともあります。

食育

近年、特に子どもたちが、「食」について学び、正しく安全な食生活が送れるようにと、「食育」に対して高い注目が集まっています。これも、食に関する大切な仕事です。食育とは、食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる行為を意味します。

食育を実践する場所は、家庭だけではありません。学校や保育所、福祉施設など、さまざまな場所での活躍が求められます。特に、食育の場として重視されているのは、学校です。なぜなら、小学校や中学校などで実施されている給食には、栄養士や調理師など、専門資格を有する者が関わっており、実効性のある食育ができるからです。

料理というものを通じて、小学生や中学生に対して、食材の栄養バランスや具体的な調理方法まで、食育に関連するあらゆることを教育します。現在は、小学校以前の保育園や幼稚園の段階で食育がスタートしており、調理師が子どもにもわかりやすく食に関する全般的なことを伝えていきます。地域を見渡せば、郷土料理を作る料理教室でも食育が実施されており、毎朝バランスのとれた食事を摂取できるように、専門の調理師が指導にあたっています。

新しいメニューや食品の開発

今後、外食産業での独立、または、飲食店のコンサルティング業務、事業所の献立管理、新商品の発売事業などに従事したいと考えているのなら、新しいメニューや食品開発を行うスキルが必要です。食に関する仕事の中でも、知識や経験、技術が大きく問われる業務が多く、型にはまらない柔軟なアイデアが求められることがあります。

外食産業で自分のお店を開けば、看板メニューになるようにコンセプトやネーミング、売り、デザイン、価格、演出などを総合的に考慮して、お客さまに提供できるものを作らなければいけません。どこかの企業の商品開発部門に入社すれば、長期的に売上が立つヒット商品を開発することに関わる可能性もあります。

新たなメニュー作りでは、栄養バランスや美味しさ、その商品を手にとって食べたくなるような写真撮影まで実施します。毎回、新メニューを発表するときは、ドキドキしますが、自分たちで作り上げたメニューや商品をお客さまが手にとり、美味しそうに食べている姿を見るのは、非常に嬉しいものですよね。

食に関する仕事、その場所は?

将来的に調理師などの食に関する専門的な資格を取得すれば、どんな場所で働けるのでしょうか。食に関する資格を取得すると病院や福祉施設、学校など、さまざまな場所で働けます。ここでは、どんな場所で働けるのかをご説明します。

病院など医療機関

小学校や中学校で学ぶ生徒のために給食を作るように、病院など医療機関では、患者さんの病的な症状や入院前の食生活などを考慮し、栄養管理計画を立てたうえで食事を提供します。病院にはさまざまな症状を抱えた方が入院するため、栄養状態に問題がある場合は、栄養価の髙い食事を提供し、過食により生活習慣病にかかっている方は、カロリーを抑えた食事を提供するなどしています。

実際に、毎日の献立を考えるのは栄養士や管理栄養士の仕事ですが、調理師はその献立に従い、食材の調達や下ごしらえ、実際の調理や盛り付けを担当します。病院の給食は、それだけで患者さんの病状を左右することもあるため、慎重に、指示通りに調理していく必要があります。

福祉施設

福祉施設では、入所介護や通所介護で利用している人、デイサービスなどで昼間だけ利用している利用者のために、給食が提供されます。この給食を作るのは、調理師の仕事です。病院で、入院患者さんの症状に合わせて病院食を作るように、福祉施設でも、高齢の利用者や障がいをもった利用者の状況に合わせた食事を提供します。栄養士や管理栄養士が、基本的には献立を考えますが、バランスのとれた食事を提供することが福祉施設で働く調理師の仕事です。時には、行事用の料理などを調理することもあり、季節によって扱う食材が変わります。

一般的には、高齢の利用者や障がいを持った方が利用する介護(福祉)施設で料理を作るイメージを持たれがちですが、近年では、食事を委託する福祉施設が多くなっています。そのため、この仕事に従事する場合、調理を専門に受託する会社で働くことも増えています。

業務委託を受けた会社によりますが、調理師として働く場合は、担当として任された施設利用者の朝食や昼食、夕食を作ります。1人で40人分の食事を任されるようなこともあり、決められた時間までにタイムマネジメントを自分で行いながら、献立通りに料理を作ることになります。

学校

学校給食の仕事は、小学校や中学校に通う生徒のために、料理を作る給食調理員以外にも、栄養士やパン製造、配送など、多岐にわたります。学校から委託された会社に従事することになれば、休みが少なく、仕事に追われる日々を送ることになるかもしれないと考える方もいるかもしれません。

しかし、小学校や中学校には、春休みや夏休み、冬休み、土日祝日など、多くの休みがあり、休みとなる日が明確に決まっていることから、一定の人気があります。学校の給食室や給食センターで、食器のセッティングや調理を担当します。

学校が長期の休みなら給食の仕事も休み、というメリットはありますが、給食時間(昼)までに生徒全員分の給食を作ることになるため、朝が早く体力勝負という側面もあります。

レストラン

あなたの町で求人を募集している個人、または、全国展開のレストランに応募すれば、外食産業ですぐに働くことができます。

レストランの仕事は、主に2つに分類されています。1つは、お客さまに料理を提供する接客です。接客業務では、お客さまに対して、正しい言葉遣いや恥ずかしくない立ち振る舞いが求められます。

もう1つは、注文の入った料理を作るために、キッチンで行う調理業務です。レストランなどの飲食店では、メニューとそれぞれのレシピが決められており、レシピ通りに手早く調理することが求められます。

食品メーカー

テレビなどで、大手食品メーカーへの就職に関する話を見聞きしますが、この食品メーカーとは、一体どのような存在なのでしょうか?

食品メーカーとは、人間が生きていくうえで欠かせない食べ物を作り、世の中に送り届ける企業のことを意味しています。

食品メーカーの仕事は、企画部門や営業・販売部門、開発・生産部門、管理部門など、さまざまな部門が連携することで成り立っています。調理師として就職するならば、企画部門や開発部門などで、新しい食品の開発に携われるかもしれません。新しい食品開発の過程では、どのような食材をどのように調理し、最終的にどのような食品にするか、ということを、何度もくり返します。つまり、何回も条件を変えて、食品を作っていくことになります。ここで調理師の出番です。同じ食材を使っても、調理法や条件を変えるとどうなるか、何度もトライしていく必要があります。それを専門的な知識とスキルで作り出していくのが、調理師の役割となるでしょう。

食に関する仕事、必要とされている?

私たちの生活において、食に関する仕事は必要とされているのでしょうか。

食は、人間の健康を維持するうえで、なくてはならない存在です。ここでは、食に関する仕事がどのように人から必要とされているのか確認していきます。

食は「健康」と深い関係がある

健康的な状態で長生きをするには、栄養バランスのとれた食事を規則正しく食べなければいけません。近年、海外からの外食産業が日本へ進出してくるに伴い、安価な価格で食事が食べられるようになり、食生活そのものが欧米化しました。その結果、人々が栄養バランスのとれていない食事をとり続けることとなってしまい、生活習慣病やその予備軍になる人が増えています。

このような背景により、栄養バランスのとれた食事を自らの意思で賢く選び、組み合わせながら摂取する能力が高く求められるようになっています。

子どもたちに必要な食育

近年、特に子どもたちに対して行われていることの多い、食育。将来の社会を創造する子どもたちが生活習慣病にかかることなく、健康的で健全な成長をとげるためには、人間が生きるうえで必要となる食の知識や道徳、運動の基本、食の安全性などを説く「食育」が必要です。食育によって、子どもたちが健全な心や身体を養うことができれば、日本の未来や国際社会の展望は、明るいものとなるでしょう。

感性豊かな子どもたちに適切な食育を行えば、人格の形成や心身の成長に大きな影響を与え、健全な人間性を育み、強いからだを作ることができます。幼少期からの食育は、食に対する純粋な感謝につながり、後世への食文化の継承にもつながっていきます。

食の世界も温故知新

社会情勢や経済情勢がめまぐるしく変化し、日々の忙しさに追われる中で、現代の日本人は生活しています。忙しさに追われ、まともな食事を摂らず、やがて体調をくずしてしまう、そんな人はみなさんの周りにもいるのではないでしょうか。

近年は、昔ながらの日本食の大切さが、失われてしまったのかもしれません。しかし、そのような事態に異議を唱える人も多数存在しており、日本の昔ながらの食生活、栄養バランスのとれた野菜中心の生活を取り戻そうとする動きがあります。

正しい知見や技術を持ち、食に関する仕事に従事することは、昔ながらの日本の食生活を取り戻し、子どもの豊かな人間性をはぐくむことにもつながります。その一例が、子どもたちに対する「食育」です。栄養バランスのとれた野菜中心の食事を提供することが、調理師など食に関するスペシャリストに、求められているのではないでしょうか。

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