懐石料理と会席料理って、なにが違うの?
2018年11月10日
懐石料理と会席料理は、同じ読み方なので、「漢字の書き方が異なるだけで同じ料理では?」と思う方もいるでしょう。しかし、両者には明確な違いがあります。今回は、懐石料理と会席料理の違いや、その歴史的な背景についてご紹介します。
懐石料理とは?
茶道の侘びや寂びを表現した「茶の湯」の前にいただく食事のことを、懐石料理といいます。茶の湯の会の主催者がお客をもてなすために、用意される料理です。
懐石料理には主に、以下のような3つの原則があります。
- ◆少量で季節のものを利用すること。
- ◆素材を活かすこと。
- ◆おもてなしをすること。
これが、懐石料理の原則。さらに、「一汁三菜」であることが基本であるため、飯と汁ものを最初に食べ始めます。
もともと、懐石料理は、会席料理と同一の漢字でまとめられていたようです。なお、懐石とは、料理以外にも冬の寒い時期を少しでも暖かく過ごすための、温めた石を意味します。これを懐に抱いて暖を取るから「懐石」です。現在の湯たんぽと言えばイメージしやすいでしょうか。
さまざまな説がありますが、修行中の僧侶が飢えをしのぐために懐に温めた石を入れていたため、懐石料理という名前ができたと言われています。また、茶を楽しむ前の空腹を軽く満たすための料理ということから、茶の湯の前の料理のことを懐石と呼ぶようになったそうです。
他にも、お客をもてなすほどの料理がない時に、空腹をしのいでもらうために懐石を渡していたため、そこから由来するようになったとする説もあります。
会席料理とは?
懐石料理は、茶の湯の前のもてなしの料理であるのに対して、会席料理は、お酒をたしなむための料理です。会席料理も同様に、一汁三菜を基本としています。しかし、会席料理は、飯と汁ものを最後に食べます。
なお、会席料理では、下記のような料理が順番にもてなされます。
- ◆吸物・刺身・なます・煮物、焼物・焼魚
- ◆お通し・揚げ物・酢の物・蒸し物・和え物などの肴
- ◆飯・味噌汁・香の物・水菓子
会席料理は、士農工商という身分制度が確立された江戸時代に確立され、会合や趣味の集まりで利用されました。江戸時代ではありますが、料理の内容を見る限り、非常に調理技術が発達しているように感じます。
懐石料理と会席料理の原点は、本膳料理にある
それでは、懐石料理と会席料理の原点を探るため、室町時代まで歴史を振り返ってみましょう。
室町時代は、武家と公家たちによって、活発なコミュニケーションがおこなわれていました。さまざまな儀式にともなって、料理も有職故実な格式高いものが登場し始めます。
武家の礼儀作法が確立すると同時に、食事の礼儀作法についても厳しくルールが決められました。これによってできたのが本膳料理です。
本膳料理は、日本を代表する格式の高い料理として、お客様をもてなすために振舞われる料理です。本膳や二の膳、三の膳、与の膳、五の膳など、もてなす料理の数が決められていましたが、時代が進むとともに洋風化したため、形式にとらわれない料理に着目されるようになります。
そんな時代背景の中、本膳料理をもっと身近にしたものが、懐石料理や会席料理なのです。懐石料理は、千利休が確立した茶の湯の文化の中で体系化されました。一方で、会席料理は、江戸時代に酒宴のもてなし料理として、多くの客人をもてなすために体系化されました。本膳料理や懐石料理よって確立された食文化を取り入れることで、もてなしの料理として形づくられてきたのです。
いかがでしょうか。
懐石料理と会席料理は、同じ料理だと思われがちですが、こんなにも大きく違うことに驚きました。
このように、日本料理の成り立ちを知ることは、非常に楽しいことです。なかなか学べることではないですし、料理界で働くうえで非常に参考になります。私自身、京都調理師専門学校で学ぶ前は「一汁三菜」の意味も知りませんでした。ですが、知れば知るほど、和食の世界は面白い!少しでもご興味のある方は、私と一緒に学んでみませんか?